2019年03月04日

透析患者さんと災害対策

 2016年4月の熊本大地震から3年、東日本大震災からは8年が経過しました。

今回は災害時についてもう一度お伝えしようと思います。

1年に一度の防災グッズの見直しをよろしくお願いします。

透析中に地震が発生した場合

地震の揺れは長くて1〜4分程度です。

むやみに動くと転倒してケガをしたり、透析の針が抜けてしまう恐れがあり大変危険です。

➡ベッドに横になっている場合は、血液回路をしっかり持ちます。
テーブルを足元へ移動させ、布団を頭までおおって
落下物でのケガを予防します。

血液回路内の血液をもどす時間的余裕のないときは、緊急に回路から離脱します。方法は以下の通りです。

  • 看護師がそばに行き抜針します。
  • バンドで固定、もしくは患者さまご自身でボタン圧迫していただきます。
  • スタッフの誘導に従って避難場所へ避難してください。

★日頃から止血ベルトを広げてテーブルの上に置いておく習慣をつけましょう。

★起立性低血圧などの血圧変動のある方は起き上がる際に転倒しないよう気を付けてください。

★エレベーターは緊急停止するので使えません。階段を使用します。

★車いすが必要な方はスタッフが介助するか担架で移動します。

気分の悪い方や血圧低下が心配な方は無理をせずにスタッフに声をかけてください。

透析をしない日に地震が発生した場合

(1)かかりつけ医院に電話で連絡してください。

この場合、家庭の固定電話や携帯電話よりも公衆電話の方がつながりやすいです。あらかじめ自宅近くの公衆電話の設置場所を確認しておいて下さい。

(2)電話がつながったら、透析スタッフから具体的な指示を受けてください。(災害の程度によっては即答できない場合があります。)

(3)かかりつけ医院が壊滅状態になり情報提供ができない場合は、ご自分で透析施設を探し出さなければなりません。透析施設を探すのは電話帳からでも可能ですが、保健所や各都道府県の腎協に問い合わせて、それぞれの都道府県の透析施設の情報を得ることができます。日本透析医会は、過去の大震災の経験を教訓として支援の広域化を目指し、「災害情報ネットワーク」の整備を行い支援の中核を担えるようになっています。

かかりつけ医院が壊滅であれば上記に連絡して透析を受けることができる施設を確認してください。

災害時の食事管理のポイント

大災害が発生したら、近隣の県の透析病院への移動で透析を1週間受けられないような最悪の事態も想定しておかなければなりません。透析を受けられない間、食事や水分の管理を普段よりかなり厳しくしなければなりません。

  • 徹底してカリウムを抑えます。
    唇がしびれる、手足に力が入らずがくがくするなどの症状が現れた場合はすぐに透析しなければ心臓が止まる状態です。できるだけ早く透析のできる施設へ行かなければなりません。カリウム管理は命に直結するため一番注意しましょう。
  • 塩分を少なくします。
  • 水分を減らします。
  • たんぱく質を適度にとります。
  • エネルギーを適度にとります。

★カリウム、塩分、水分は普段の半分から3分の2程度に制限しましょう。

★支給されたお弁当などの佃煮・漬物・塩分の多そうなものは食べないようにします。

★ご飯・パン・ビスケットなどはできるだけ食べましょう。

★スポーツドリンクにもカリウムや塩分が含まれます。

災害時のような厳しい状況の中でも「食事と水分」を上手に管理すれば、数日間は日常生活を続けることが可能です

非常時持ち出し品のリスト

非常時に備えてリュックサックや手さげ等にまとめておきましょう。

□身体障がい者手帳(コピー)    □保険証(コピー)

□透析条件カード(コピー)     □預金通帳(コピー)

□懐中電灯  □ラジオ   □電池    □現金

□非常食品  □飲料水   □ラップ   □ビニール袋

□紙コップ  □紙皿    □アルミホイル

□下着    □タオル   □手袋または軍手

□ティッシュペーパー   □ウェットティッシュ

□筆記用具  □レジャーシート □薬手帳


非常用バッグ、定期薬はいつも手の届くところに!透析条件カードと保険証はいつも持ち歩くようにしましょう!

ご家族や病院の連絡先も一緒に保管してくださいね。

posted by じんたろう at 19:18| Comment(0) | 災害対策 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年02月12日

「かゆみ」を知ろう!

今回のテ−マは 「かゆみ」 です。最も多くの方が感じている合併症ではないでしょうか? 「かゆみ」を知り、症状の軽快を目指しましょう。

透析患者のかゆみの原因 (様々な仮説がありますが、主な3項目を挙げます)

1 皮膚の乾燥 (ドライスキン)

dryskin.png

透析による除水や水分制限などにより皮膚への水分供給が低下するため、角層の水分量が全身で低下していきます。また、皮脂や汗の分泌も低下しており、ドライスキンが高頻度に認められます。ドライスキンでは皮膚バリア機能が低下し、かゆみを伝える神経が皮膚の表面近くまで伸びてくるため、外からのわずかな刺激にも皮膚が敏感となり、かゆみを感じやすくなります。

2 腎不全や透析治療による異常

  • 尿毒素の蓄積
  • 透析機械と血液が接触することによりアレルギー反応やかゆみの原因物質が活性化
  • 二次性副甲状腺機能亢進症、リン・カルシウム値の上昇
  • 消毒や針刺し・テープの刺激

3 中枢神経内のかゆみ制御の異常

  ストレスは、かゆみに関与する神経内の制御機能のバランス異常をおこすと考えられています。

かゆみが改善する生活

クリーム塗布.png
  • できるだけ長時間透析を行って、かゆみの原因となる尿毒素を取り除きましょう。
  • 乾燥肌には保湿剤でスキンケアを毎日行って、かゆみを予防しましょう。長くコツコツと続けることが大切です。
  • 保湿剤は入浴後5分以内に、また、入浴しない日の朝や夜の着替えの際などに十分な量を塗りましょう。
  • 熱いお湯・長湯を避け、ゴシゴシこすらないようにしましょう。
  • 皮膚を傷つけないように、爪はこまめに切りましょう。
  • 適度な室温・湿度を心掛けましょう。
  • ストレスをためないようにしましょう。爪切り.png

乾燥肌やかゆみに困ったら、いつでもスタッフに相談されてください

早め早めの対処が大切です。

posted by じんたろう at 14:46| Comment(0) | かゆみ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年01月09日

透析患者さんと心疾患

透析患者さんは、心疾患を起こすリスクが高いことがわかっています。その理由は、透析導入前から心疾患の原因である動脈硬化が進行しているためです。また、尿が出ないことで、心臓にかかる負担が大きくなるのも原因の一つとなります。

1.心疾患の2大原因

@動脈硬化の進行動脈硬化.png
動脈硬化は、血管の壁にコレステロールがたまって、血管が狭くなったり、詰まったりした状態です。脂質(コレステロール)異常症や高血圧、糖尿病によって進行します。透析患者さんは、このような疾患を合併していることが多く、さらにリン、カルシウムの代謝異常が加わって、血管の石灰化が進みやすいのです。

A心臓にかかる負担の増大
透析患者さんは、透析と透析の間は水分が体に溜まるため、体液(血液)量が増えます。血液量が多いと、それを全身に送り出す心臓に負荷がかかります。 また、透析患者さんがなりやすい貧血も心臓に負担をかけます。貧血が重症になると、多くの血液を全身に送り出そうとして、心臓に負担がかかるからです。

2.心血管系疾患の種類

透析患者さんの動脈硬化は全身で進行するため、さまざまな心血管系疾患を起こします。心血管病変.png

⓵虚血性心疾患
心臓の筋肉に栄養を送る血管(冠動脈)がつまって、突然の胸痛や冷や汗などがみられます。症状が一時的におさまれば狭心症、血流がとだえて心臓の筋肉が障害されると心筋梗塞です。

A心臓弁膜症・・・血液の逆流を防ぐための弁が石灰化により動きが悪くなり、心臓が血液を体にうまく送り出せなくなります。さらに弁の逆流により心臓に負担がかかります。

B不整脈・・・上記のような心臓の疾患や血液中のカリウムの異常などが原因で、心拍数やリズムが不規則になります。

C心不全・・・心臓のポンプ機能が低下した状態で、さまざまな心臓病が原因となります。透析患者さんは体液量が増加しやすいため、心臓に負担がかかって心不全になりやすいことが知られています

*症状・・@左心不全・・・肺うっ血、全身への血流低下(低心拍出量症候群)下肢浮腫.png心臓.png

A右心不全・・・全身の浮腫やうっ血肝、腹水

3.心疾患の原因について詳しく説明すると

@尿量減少・・・尿量の減少あるいは無尿になると、摂取した水分や塩分はそのまま体重増加につながって、心臓への負担を増します。透析間の体重増加が多く、透析のたびにドライウェイト(DW)までしっかり除水できない場合は、過剰な水分を常に体内に残してしまうことになり、心臓への負担を増すことにつながります。

A血圧管理不十分・・・血圧の管理が悪く高血圧が長期に持続すると、心臓肥大を生じて心臓への負担が増します。心ポンプ.png

Bリン、カルシウムの管理不十分・・・リンやカルシウムの管理が悪いと、心臓の筋肉の働きを障害し、心臓の弁の石灰化から心弁膜症(大動脈弁狭窄症や僧帽弁閉鎖不全症)を生じて心不全を起こしやすくなります。

C貧血・・・貧血は心臓の働きを障害し、心不全を起こしやすくします。

D透析量の不足・・・十分な透析を行っていない場合には、尿毒症性の心筋障害を生じる危険性があります。

E糖尿病・高血圧・高脂血症・狭心症・心筋梗塞・喫煙・高齢者・・・動脈硬化が進行しやすく、虚血性の心臓病を生じやすくなっており、狭心症や心筋梗塞等の虚血性心臓病は心不全の大きな危険因子となります。

4.心疾患対策

心血管系疾患を防ぐためには、動脈硬化の予防や、心臓にかかる負荷の増大を避けることが重要になります。
@血圧のコントロール血圧測定.png

透析患者さんの場合、適正な透析を行った上で、血液量が増えすぎないように、塩分・水分の摂取量を制限したり、降圧薬を用いたりして、血圧を適切にコントロールします。

Aコレステロール異常の改善
食事療法や運動療法で、血液中のHDLコレステロール(善玉コレステロール)、LDLコレステロール(悪玉コレステロール)や中性脂肪を適切に管理します。また、必要に応じて脂質降下薬を用います。ただし、低栄養状態にならないように注意する必要があります。
減塩.png
Bリン、カルシウム、カリウムのコントロール 
リンとカルシウムは血管の石灰化の原因になるミネラルなので、食事療法や薬物療法で特にしっかりと管理します。また、カリウムも同様に食事療法や薬物療法でコントロールします。

C貧血の改善
十分な透析を行うことや、造血ホルモン剤や鉄剤による薬物療法などで貧血を改善します。

〈当院で行う検査〉

心電図、心エコー図、24時間心電図、下肢ABI検査、頸動脈エコー透析治療.png

採血(LDLコレステロール、中性脂肪、リン、カルシウム、i―PTH)

ドライウエイト評価(胸部レントゲン、下大静脈径の検査)

スタッフ.png
posted by じんたろう at 10:47| Comment(0) | 心不全 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする